2018年12月29日更新

新・日本現代詩文庫141『小林登茂子詩集』
小林登茂子/著

 ここまで小林さんを駆り立ててきたものは何であったか。「地球」主宰の秋谷氏と小林さんとに繋がるもの、それは秋谷氏には山岳行が詩の骨格を成しているように、小林さんは演劇の舞台を通して様々な人間像を捉え詩の原点に据えている。それを無意識に感得したとき、ひた向きに「地球」に、秋谷氏にその後を追ったことは当然の成り行きであったろうと私には思われるのである。
(高橋次夫・解説より)

ISBN978-4-8120-2483-6
定価 本体1400円+税
発行日 2018年12月25日

詩集『風の頁』
山野井悌二/著

のそりのそり
生き物が
動いている
私か
ああ 確かに
私に違いないな

ISBN978-4-8120-2484-3
定価 本体2000円+税
発行日 2018年12月25日

詩集『詩雑誌群像』
村椿四朗/著


未知のような闇でなく
迷走するようなサイレン音でなく
遠吠えするような犬の声でなく
ジェット機のような爆音でなく
無言の追い立て背にし
きょうも高層ビルに生活する
いつもと同じように

ISBN978-4-8120-2479-9
定価 本体2000円+税
発行日 2018年12月10日

詩集『いのちの渚』
山口春樹/著

去年、秋冷の候、近くの公園で、桔梗の一叢に咲き遅れた一輪が目にとまり、その深々とした濃紫にしばし見惚れた。そしてこの春、北国の友から便りがあった。雪が多かったので雪解けがずいぶん遅く、福寿草がいつになく色濃やかに咲きましたと。
(作品「逆境の花」より)

ISBN978-4-8120-2480-5
定価 本体2000円+税
発行日 2018年12月10日

詩集『石の懐』
高橋次夫/著

蝉もかなぶんもその時 静謐の中で 濃密な時間に
くるまれているように見えた。
わたしもこの昆虫たちにもどれたならば 庭先の玉石が
わたしの千年の眠りのために
その懐を柔らかく広げてくれるにちがいない。

ISBN978-4-8120-2478-2
定価 本体2000円+税
発行日 2018年12月1日

詩集『ささやかなコギト』
植村勝明/著

永遠の学徒植村勝明は、
日々、この世に在らざる超越者の声に、耳をそばだて、身を慎み、
真理探究の道へと、与えられた命のすべてを使い、生きている。
この行為はささやかではあっても、その実相は祈りのように深い。
(中村不二夫)

ISBN978-4-8120-2467-6
定価 本体1600円+税
発行日 2018年12月10日

詩集『Ti amo―君 愛しています』
松田悦子/著

エレベータのボタン 0・1・2・3・4
住居ボタンは3階しかし部屋は4階
フロアーは吹き抜け とてつもなく高い天井 外観は
どこもいかめしいゴチック建築 高い建物を囲んで植木が
植えられた中庭 外の世界を遮断し
……慣れるのだろうか

ISBN978-4-8120-2482-9
定価 本体2000円+税
発行日 2018年11月30日

詩集『挽夏』
宮崎亨/著

おれは夢のなかでかんがえている
それとも針の穴が
五百円玉の穴に広がったというのか
それともまた
かんかん照りの夏の陽に干からびている蚯蚓
いのちという重荷から解きはなたれたのか

ISBN978-4-8120-2470-6
定価 本体2000円+税
発行日 2018年11月20日

詩集『グッドラック』
大場孝利/著

雨 理由ある 雨//公園の/ブランコが/笑った//さわめき/笑った//揺れで//そのまた次が/笑った//―ふーれ、ふーれ//フレンドパークの/ぐるりを/結んでいくもの//快也//心に/落ちて/実って//響く//そういうものが/あるということ//病みで/笑みを失った/女の子が/綻んだ//―おいで//父さん母さんに聞こえない/声//―行く//少女は//赤い雨傘/一本//径へと立つ//外には/雨//こぬか/雨/しろき/雨//の/そぼつ/光れる
(「少女の赤い雨傘」)

ISBN978-4-8120-2475-1
定価 本体2000円+税
発行日 2018年11月30日

2018年12月更新

詩集『弱虫革命』
高田邦雄/著

ここでの高田邦雄の類まれな反骨精神は、
母敏子のDNAを確実に受け継いでいる。
これだけ、大胆に思い切りよく自ら思うところを書いていれば、
母敏子は詩人高田邦雄を無条件で認めてくれるのではないか。
(中村不二夫・解説より)
ISBN978-4-8120-2441-6
定価 本体2000円+税
発行日 2018年11月15日

詩集『草族』
馬場晴世/著

詩人は井戸を掘る存在である
馬場晴世の草は生きる苦しさから逃れるようにしてなったものであったけれども、本心では自由を強く希求していた。不自由な草は、自由の裏返しの草でもあった。その深い思いは、ディキンスンのそれとまったく同じものであったのだ。
(中上哲夫「栞」より)
ISBN978-4-8120-2465-2
定価 本体2000円+税
発行日 2018年11月30日

詩集『柚子の朝』
西村啓子/著

垣根の周りに 真っ白な百合を植えよう
通りかかる目の不自由なあなたが その高い香りに
夏が来たことを 知ることができるように

ISBN978-4-8120-2476-8
定価 本体2000円+税
発行日 2018年11月30日

詩集『花忍の花蔭から』
村尾イミ子/著

キラキラと光る水面 そこはわたしの源流
パシャパシャと水に浸り 心まで濯がれて
始めの小さな欠片に戻っていく

ISBN978-4-8120-2471-3
定価 本体2000円+税
発行日 2018年11月30日

詩集『さくら』
武井和人/著

あした
ほくの體から抒情が流れ出てゆくだらう
ぼくは確實に枯れてゆく

ISBN978-4-8120-2472-0
定価 本体2000円+税
発行日 2018年11月30日

詩集『無窮動』
佐々木久春/著

佐々木久春はこの詩集で、これまでの自然観を継承し、神話的時間の言語化を不動のものにした。…穏やかな主張の仕方ではあるが、現在の物質文明を生きる日本人に、「このまま生きていってよいのか」と問題提起し、現代詩というやっかいな土壌を介し、そこに知力のすべてを結集させ、得体のしれない現代文明に対峙していったのである。
(中村不二夫・解説より)

ISBN978-4-8120-2477-5
定価 本体2500円+税
発行日 2018年11月30日