19世紀の幕が開けようとする、1790年代後半。 イギリスの都ロンドンには[天然痘]の猛威が襲いかかっていた。
救済手段のない不治の病に対し、国家が取った対応は、発病の疑いのある者達を、ある半島へと押し込めるという、徹底した隔離対策だった。通称、貧民街。そびえ立つ塀と、大海へと続く断崖絶壁とに囲まれた、半島の街。悪魔の病[天然痘]は、この閉ざされた世界の中に隠されたのである。
社会全体がヒエラルキーに支配され、社会を動かす上層階級の人間達は、私利私欲と、自らの保身のみに心を奪われている。
そんな社会風潮の中、一人の野心に充ちた学生が、名門ケンブリッジ大学の門を叩く。ヴィクター・フランケンシュタイン。
伝統に根付いた、動かぬ大学理念を前に、行き場を失いかけていた彼の前に、一人の大学教授(生物学者)が現れる。エリック・ヴォルトマン。
前世代迄の学者達の思想を推奨しつつも、若き野心を認める科学者。二人の類稀なる才能は共鳴し合い、天然痘ワクチン開発に向けた熱き研究が開始された!
しかし、前途を照らし出していたかに見えた二人の関係は、学界への学術書発表を前に、綻(びを見せてゆく。
慈愛に充ちたヴォルトマンと、彼の歩む茨(の道のりを信頼し、臆することなく辿ってゆく、その家族。彼等の深い絆は、苦い生い立ちを背負っていたフランケンシュタインの羅針盤を徐々に狂わせていったのだ!
ヴィクター・フランケンシュタインの抱いていた熱き野望が、やがて彼等を荒波へと誘ってゆく――。
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