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新・世界現代詩文庫

■ 新・世界現代詩文庫① [現代中国少数民族詩集]

秋吉久紀夫/編訳
中国には現在、五十六の民族が居住していて、人口の九〇%を漢族が占め、残りがおおむね辺境地区に居住している少数民族である。これら少数民族のひとびとの文学は、いまだに明確に国外には知られていない。ただ、存在は知られていても文字での文学作品はなく、きっと伝承か民謡の類いだと見做されていたはずである。しかし、いまや中国の少数民族のひとびとは、各自に有するウイグル、ロシア、モンゴル、満洲、朝鮮、カザフ、イ、チベット文字などで作品を発表すると同時に、共通語である漢語の書けるひとびとは共通語の漢語で執筆し、または優秀な作品は共通語に熟練した翻訳者によって翻訳され、全国的な文芸誌などに発表されている。 (「解説」より)
ISBN4-8120-1347-X 定価1,400円+税

■ 新・世界現代詩文庫② [現代アメリカアジア系詩集]

水崎野里子/編訳 
アメリカとカナダの中で、アジア系であることを深く追求し、人間としての喜怒哀楽を堂々と言明した彼らの詩は、他ならぬ世界の中で我々アジア人の発する叫びをも代弁している。そして、さらにそれらは、アメリカ人ではなくアジア人である我々も、世界の中で自分のアイデンティティを追求し、確立する任務を怠ってはならぬという事実を我々に教えている。更に私はここで、黒人文学やアジア系アメリカ文学を包括する現在のアメリカ文学の多様性を賞賛したい。この多様性に関しては、わが日本文学も負けずに志向することを望みたい。人種偏見とかいろいろ言われるが、アメリカはまた多様性を受け入れる国であり、自分の明確な声を持つ者は持つ者として評価する国でもあることは明記する必要があるだろう。(「あとがき」より)
ISBN4-8120-1348-8 定価1,400円+税

■ 新・世界現代詩文庫③[金光圭 詩集]

尹相仁(ユン・サンイン) 森田進 共訳
金光圭の詩は生理的に気取りと誇張を忌み嫌う。言葉の官能に酔い痴れるだけの余裕はもとからない。その代わり、彼の詩にはいつも静かな眼が光っている。言い換えれば、それは無味乾燥と思われるほどの透明な現実認識といってよい。詩が日常より高いレヴェルに存在するという神話を金光圭ほど力強く否定した例はないだろう。(尹相仁・解説より)
言うならば国際的な詩人である。韓国内詩壇とはゆるやかに交流しているが、基本的には超然としていて、むしろ孤高の矜持の中に身を置いている。詩を垣間見ていて分かるように文明批評の視点を堅持している認識者である。中でも最も重要なのは、他者へと働きかける対話的精神を鮮明にしている点である。関係性を生きようとする愛の詩人と言ってよいだろう。(森田進・解説より)ISBN4-8120-1428-X 定価1,400円+税

■ 新・世界現代詩文庫④[ベアト・ブレヒビュール詩集]

鈴木俊/編訳
ベルン近郊の造園業の家(それを彼は後年お伽噺の家のようだったと回想していますが)に生まれたブレヒビュールは、今日までスイスの自然や人々の生活から切っても切り離せない処で詩を書き、小説を書き、童話を書いてきました。スイスには、ドイツ語圏やフランス語圏、イタリア語圏とそれぞれ地域固有の文化があるにもせよ、それらもろもろの要素を一つにしたスイスという国の生えぬきのスイス人……とりわけボーデン湖畔の農民達にぬきさしならぬ愛着を保ちつづけてきた詩人といえましょう。(「訳者あとがき」より)

■ 新・世界現代詩文庫⑤[現代メキシコ詩集]

アウレリオ・アシアイン/鼓 直/細野豊 編訳
序文 アウレリオ・アシアイン  評論/細野豊

予防処置

恋人たちは愛し合う、夜も、昼も。/乳房にくちびるを、くちびるに乳房を与え、/
吸い、キスをし、舐める、/肉体でもって/愛のお定まりの不謹慎さに注釈を加え、/濡らし、油を差し、蜜を塗り、診察する。
しかしラウンドが終了すると/二人はそれぞれのブラシで歯を磨く。
エドゥアルド・リサルデ (鼓直訳)

そよ風
そよ風は やわらかな/葉裏に指先を触れる/葉は輝き ゆっくりと回る/ひと吹き もうひと吹き/葉は驚き 舞い上がる すっかり警戒して/目の不自由な人の 敏感な指のように/風は葉をかき回し/探し当てて解読する 縁を/波のような盛り上がりを その厚みを/静かに流れる鍵盤を/震わせていく/コラル・ブラーチョ (松下直弘訳)
日本人とメキシコ先住民の血の近さや、日本、メキシコ両国の歴史や地理的条件の類似性(両国とも、過去において一方は中国文化の、他方はスペイン文化の多大な影響を受け、十九世紀以降は、ともに仏、英、米等の文化に大きく影響された。また、ともに米国の隣国である)を考慮するとき、メキシコ人とメキシコは日本人と日本を映す鏡であると言えよう。従って、メキシコの現代詩を深く、的確に把握することによって、日本の現代詩の今後進むべき方向も見えてくるのではなかろうか。(細野 豊・解説より)
<収録詩人>アリ・チュマセーロ/ルヘン・ボニファス・ヌーニョ/ハイメ・サビーネス/トマス・セゴビア/エドゥアルド・リサルデ/ウラルメ・ゴンサーレス=デ=レオン/マルコ・アントニオ・モンテス=デ=オカ/ガブリエル・サイー/ヘラルド・デニース/ホセ・カルロス・ベセーラ/セルヒオ・モンドラゴン/ホセ・エミリオ・パチェーコ/オメーロ・アリディヒス/エルサ・クロス/アランシスコ・エルナンデス/アントニオ・デルトーロ/ダビー・ウエルタ/アンバル・バスト/アドルフォ・カスタニョン/コラル・ブラーチョ/アルベルト・フランコ/ホセ・ルイス・リバス/マヌエル・ウラシア/ファビオ・モラビト/ハイメ・モレーノ・ビリャレアル/カルメン・ボウリョーサ/ホルヘ・エスキンカ/フランシスコ・セゴビア/テディ・ロペス=ミルス/アルバ・フローレス/アウレリオ・アシアイン/アナ・ベレン・ロペス/エドゥアルド・バスケス=マルティン/ルイス・イグナシオ・エルゲーラ/フリオ・トルヒーリョ/ルイヒ・アマーラ/マリーア・バランダISBN4-8120-1449-2 定価1,400円+税

■新・世界現代詩文庫⑥ [スティーヴィー・スミス詩集]

郷司真佐代/著

取るにたりないわたしの人生
もう うんざり
でもしばらく待つわ
決めるのはそれから

なぜって
きゅうに希望がわいて
いいことがあるかもしれない
はなひらくことがあるかも
しれないから

ただまだわからないのよ
神さまが味方なのか
ほんとうに力があるのか
それともいじわるなのかが (「理由」より)
ISBN978-4-8120-1673-2定価1,400円+税

■新・世界現代詩文庫⑨ [現代世界アジア詩集]

水崎野里子/編訳

そして あなたが低く低く沈んで行き
時には 岩の底まで辿り着いても
そこに居続けてはならない 諦めてはならない
踏みしめ 浮き上がり そして自分に言うのよ
再び今 新しいコーヒーをポットで沸かす時だと
エルマ・D・フォティカーム「コーヒー?……コーヒー?」より

『現代アメリカアジア系詩集』から『現代世界アジア詩集』へ。その変遷はアジアの詩への着目と積極的な受容という世界的な変遷でもある。その変遷の中で今、特に日本と中国の詩活動への世界的な期待がある。現在日本の詩人に求められることは、国際的な詩の状況の中でのその認識と、相応する「アジア」の中の「日本の詩」のアイデンティティの明確な確立であろう。(水崎野里子・解説より)
ISBN978-4-8120-1802-6 定価1,400円+税

■新・世界現代詩文庫⑩ [リルケ詩集]

ライナー・マリア・リルケ/著 神品芳夫/編訳

だれが、わたしが叫んでも、天使の序列から
わたしの声を聞いてくれようか。もしも
天使のひとりがわたしを胸に突然抱くとしたら、
その強烈な存在のため、わたしは滅びてしまう。なぜなら美は
われわれが辛うじて堪えうる恐ろしいものの発端にすぎないから。
(「第一の悲歌」より)
世上リルケは最も詩人らしい詩人といわれて人気を集める一方、フランス象徴主義からもドイツ表現主義からも切り離された特異な詩人という扱いを受けてきた。五歳まで女の子として育てられたとか、祖先が貴族の家柄だったという証拠を探し回ったとか、庶民の暮らしの哀歓にまみれたことがないという事実は、現代の詩の読者には縁遠いものに思われた。しかしリルケは古代ギリシャからパウル・ツェランまで、チェコから日本まで、幅広い文化圏とつながりをもっていることは注目に値する。彼には孤独を生き抜く孤立した詩人というイメージが付きまとうが、彼の詩はひとり聳える高い山の頂ではない。むしろ、およそ詩が進路を見失ったときに一旦立ち返ってみるべき近代詩の原点の一つといえるのではないだろうか。
(神品芳夫・解説より)
ISBN978-4-8120-1789-0定価1,400円+税

■新・世界現代詩文庫⑪ [ヌーラ・ニゴーノル詩集]

池田寛子/編訳

彼女が目を覚ますと
魚の尾っぽは
なくなって
ベッドの中にあったのは
ふたつのながくてひんやりしたもの。
あなただったら――海草の枝かしら それとも
肉の切り身かしら なんて思うかも。
「病院の人魚」より

 イギリスやアイルランドには人魚の出てくる文学作品が少なくないが、ニゴーノルの作品はその斬新さで異彩を放っている。三十七篇もの詩を人魚に捧げた詩人は他にはいまい。しかもニゴーノルは従来の人魚の役割に問い直しを迫り、革命を仕掛けている。人魚世界を紡ぎ上げているのは、彼女の母語であり少数民族言語の一つであるアイルランド語である。アイルランド語以外の言語を通して人魚の声に耳を澄まそうとする読者にとっても、このことはなにがしかの切実な意味を持ってくることだろう。
(池田寛子・訳者覚え書きより)

ISBN978-4-8120-1791-3 定価1,400円+税