2024年1月更新 

詩集『僕がいない町』
中川ヒロシ/著

河野先輩は全日本の選手で活躍したのち先生になった
田中君は建設業で何億か借金がある
高田君は工場をいつも辞めたがっている
宮下君は二年前 過労死した
僕は少しの間 本当に歌った
今は 何もなかったように 暮らしている
ISBN978-4-8120-2818-6
定価 本体1800円+税
発行日 2023年12月25日

詩集『果てしない青のために』
青山勇樹/著

せつなさがあふれてどうにも止められないときは
誘われるまま透きとおる青になって海をわたる
おそらくいのちはいくたびも姿を変えるだろう
いつかあなたとひとつになるからきっとなるから
おおきな願いそのものに成り代わろうとするように
ISBN978-4-8120-2797-4
定価 本体2000円+税
発行日 2023年12月24日

詩集『パルスと円環』
麻生秀顕/著

寒くて長い夜が明けて
幻を求める男たちが
白馬に乗ってやってきた
魂も凍る氷の世界から
唇も焼ける砂漠の地平から
そのころの私には
そう見えたのでしょう
ISBN978-4-8120-2816-2
定価 本体2000円+税
発行日 2023年12月20日

詩集『先生の手料理』
則武一女/著

クルミやなつめにピーナッツ
箱にぎゅうぎゅう詰めで送られてきた
先生からの贈り物
…………………
わたしの思い出の詰まっている所から
ISBN978-4-8120-2815-5
定価 本体2000円+税
発行日 2023年12月10日

詩集『虹のような日』
見上司/著

 ウクライナの悲劇にシェフチェンコの詩を思い、いや君はすでに二〇〇二年三月に北欧を思わせる『ニルス』という詩集を出していた。やさしさと愛をかみしめるために詩を書く、また「ペテルブルクの夏はうつくしい」(「白夜もしくは罪と罰」)と君に教えてくれたロシアの若い娘もいた、という。
 君の言う通り、詩を楽しもう。生きることと死ぬことの悲しみを滋味(あじわ)うために。各自に涙ぐみ、やさしい諦めのなかで、そして何度もことばを噛みしめながら。
(佐々木久春)                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
ISBN978-4-8120-2810-0
定価 本体2000円+税
発行日 2023年12月10日

2023年12月6日更新 

詩と思想新人賞叢書17
『空位のウィークエンド』
雨澤佑太郎/著

昏睡が美徳とされる近未来
地獄は完全予約制となった
凶事への招待も魚料理がついてくるのであれば悪くはない、
と都会のニュースキャスターは冗談を言った
ISBN978-4-8120-2804-9
定価 本体2000円+税
発行日 2023年11月20日

詩集『不思議な詩 詩の不思議』
安藤一宏/著

詩人は大抵いつの時代も饒舌だ
たとえば
君の周りにいても君には見えない所で
君を見つめていた
(あるいは見えない時空の向こう側で)
(少し斜に構えながら)
ISBN978-4-8120-2808-7
定価 本体2000円+税
発行日 2023年11月20日

詩集『催花雨』
川口千恵子/著

 なぜ詩なのか、なぜ詩を書くのかと理屈っぽく考えることはない。
 川口さんは心の土壌に一つ一つ種子を蒔く。育った双葉の苗を原稿用紙の前に移植する。そういう詩作が好きなのだ。そうして育てられたのがこの詩集である。どの詩からも「私には詩がある」という声がする。
(高山利三郎)
ISBN978-4-8120-2809-4
定価 本体2000円+税
発行日 2023年11月10日

詩集『エンプティチェア』
滝本政博/著

あの人 とよべる人が一人いて
眠りから覚めても
自分が自分であることの
不思議
何処にいるのだろう
わたしはずっと
愚かなままだ
いつのまにか時は過ぎ
また
この椅子に座っている
ISBN978-4-8120-2814-8
定価 本体2000円+税
発行日 2023年11月10日

詩集『環境文化』
大場孝利/著

北九州市には暗い歴史があった。公害である。そのとき、声を上げた市井の人たちがいる。戸畑婦人会の女性たちである。それは、家族や暮らしを守ることのみに目標を設定したものであったと言われている。
ISBN978-4-8120-2793-6
定価 本体2000円+税
発行日 2023年9月10日


詩集『メモの重し』
武西良和/著

木々の間に道は見えない
どこをどう行こうとしたのか
そこへ進入することができない
踏み込めば二度と 出てこれない気がする
空高く鳶の旋回 目はぼくの場所を知らない
ぼくも飛行の位置が分からない
ISBN978-4-8120-2794-3
定価 本体2000円+税
発行日 2023年9月1日

詩集『残照・その後』
硲杏子/著

画家が心血を注いで描き遺した作品「残照」。画面に実在が活き活きと立ち上がる様に、妻はかえって夫の不在、離別の悲しみを覚える。しかし妻は詩人として、悲嘆や脱力を越え、いま一度共にした日々と別れを言葉で描き直そうとする。紡がれた詩の言葉のうちに、詩人と画家は、生と死の隔て、また詩と画の差違を超えて、再びいのちの反照を交わし合う姿で並び立つ。
(川中子義勝)
ISBN978-4-8120-2784-4
定価 本体2000円+税
発行日 2023年9月30日

詩集『狐火』
佐久間隆史/著

外見的には
この世に居ながら
実際には
この世に居ない他国者
私たちが
時に耳にする狐火
それは
あるいはもしかしたら
その他国者が
この世の外でともす
孤燈を意味しているのかもしれない
―詩篇「狐火 Ⅰ」より
ISBN978-4-8120-2802-5
定価 本体2000円+税
発行日 2023年9月10日

詩集『みずうみ』
中山郁子/著

私たちは二度と
塩の街(ザルツブルグ)を訪れることはないだろう
少年と少女は見つからないだろう
その昔
憂鬱な王を沈めて
静まりかえっていたみずうみ
夕闇が迫り 私たちは蛾のように歩いた
ISBN978-4-8120-2801-8
定価 本体2000円+税
発行日 2023年9月10日

評論集『文学と政治・黒田喜夫への報告』
大場義宏/著

 刻一刻、激動する時代の状況はたいへんな勢いで私を、そして私たちを乗り越えていきます。私たちの自然の環境や状況のみならず社会の制度や状況は、さまざまな局面で変容崩壊を重ね、留まるところを知らない様相を呈してきました。……そうした一刻の猶予も許さない激しい変容に取り残されまいと精一杯の見聞に努めていると私は遅ればせながら気づく。そこは、没後四〇年にもなろうとする黒田喜夫の射程内の課題であったり、領野内のできごとだったりする。そのことに驚くことになるのです。
ISBN978-4-8120-2785-1
定価 本体3000円+税
発行日 2023年8月15日


詩集『北浦街道』
魚本藤子/著

海岸通りを通る人はみな うみの方を見て通る
きらりと光るもの反射して 裏返る午後
ふと指先に刺さったままの
棘のことを忘れる
ISBN978-4-8120-2788-2
定価 本体2000円+税
発行日 2023年10月17日


詩集『水は器に合わせ形を変えるでしょういつか 思いもよらぬときに』
あさぎとち/著

あたたかいふゆのそらは さざなみ
どこまでもつづく さざなみ
そらのはしにすわり かぜのこえをきけば
かなしみは ほほをつたい
ぜんぶ つちにおちてしまうのです
ISBN978-4-8120-2798-1
定価 本体2000円+税
発行日 2023年9月30日


詩集『青の引力』
椿美砂子/著

色彩に溢れている。それが万華鏡の様に次々と姿を変える。
昔演劇少女だった彼女が思い出される。
アングラというジャンルが輝いていた頃その舞台から放たれていた原色の熱が一瞬甦った。
少女時代の鮮烈な感覚をあなたもぜひ思い出してほしい。
(関口誠人)
ISBN978-4-8120-2806-3
定価 本体2000円+税
発行日 2023年9月23日


詩集『過激な夢想家の桃』
久保俊彦/著

雲の中で滴が伸長し重力に耐えきれない雫が
地上に落下して恵や災をもたらす
氷結したものが再び融解してもそうなる
たわいのない遊びながら掴もうとすると
するりと記憶の隙間から逃げだす
語彙を扱う厄介さと似てなんだかそわそわしてしまう
ISBN978-4-8120-2805-6
定価 本体2000円+税
発行日 2023年10月20日


詩集『信州方言辞典』
和田攻/著

今日は稼ぎすぎて くたくた ぐったぐた
おまけに腰が痛くって いてーなんてもんじゃない
ひどくお疲れのごようすで えっ おごしが痛む?
訛るな ようござんす 腰 腰
ごしがいてーで
ごしてーでしょうか
ISBN978-4-8120-2799-8
定価 本体2000円+税
発行日 2023年11月10日


詩集『蒲の穂わたに』
井上尚美/著

朝いちばんにすること
剝き出しの腕を水に差し入れ
卵焼きの黄みをかき混ぜる手順で
金盥の太陽を攪拌する
私を再生させる清らかな水たち
ISBN978-4-8120-2800-1
定価 本体2000円+税
発行日 2023年10月31日


詩集『あかんたれ』
松田悦子/著

ホテルのラウンジ 頼むのはコーヒー
お尻 どっかり それぞれにカゴメカゴメを歌い出す
お尻 三つまでが 連れ合いの人に先立たれたと
お尻 残り一つは生き別れ 黒い沈黙 静かに流れた
ISBN978-4-8120-2807-0
定価 本体2000円+税
発行日 2023年11月10日


詩集『未:完成』
小山修一/著

瓜という字にはツメがあって 爪にはツメがありません
詰めが甘かった事例です
風呂は湯加減 料理なら塩加減
たいせつなのは いいかげんと
思いつきと 思い込みと
思いやり
ISBN978-4-8120-2796-7
定価 本体2000円+税
発行日 2023年11月20日

詩集『滴る音をかぞえて』
川井麻希/著

朝と共にやってきたあなたは
光のかけらを握りしめて ふやふやと泣いた
新しく覚えた呼吸を確かめるように 息継ぎをする
小さな小さな名前のないひと
そっと抱いて その輪郭を確かめた
ISBN978-4-8120-2803-2
定価 本体2000円+税
発行日 2023年10月23日


詩集『我 飄飄と詩う』
高田邦雄/著

この詩集の上梓と時を同じくして詩人は八十歳を迎える。「書きたいと思うテーマがある限り書き続け」てきたし、これからも書き続けると「はじめに」志が述べられる。その言葉のとおり扱われているテーマは実に多彩である。…「飄飄と」とは、世俗に拘らぬ超然とした生の謂ではない。一人の市民として、人間として、時々の風の向きに身を晒し続ける決意の表明と読んだ。蓄積した経験と磨き抜かれた知恵で、社会の矛盾に挑戦する果敢な生を引き受ける。詩人の反骨精神が躍如とした詩集である。
(川中子義勝)
ISBN978-4-8120-2787-5
定価 本体2000円+税
発行日 2023年10月20日


詩集『星の子』
伊丹悦子/著

秋の窓べにふと 舞い込む手紙
誰かが そっと拾いあげ
それと気づいて 読み解くために
遥かな異郷からの言の葉
ISBN978-4-8120-2786-8
定価 本体2000円+税
発行日 2023年10月20日