2024年4月更新 

詩集『來陽』
出雲筑三/著

やがて灰色の隙間から一本の光 まっしぐらに伸びて来た
白壁が朝の光に輝きだし ベッドを囲む鉄柵に反射する
遂に 右手そばまで迫って来た
忘れていた太陽のめぐみ 草原の花弁のように
ひたすら求めて 伸ばす 手のひら
ISBN978-4-8120-2820-9
定価 本体1800円+税
発行日 2024年4月15日

詩集『こおろぎ おばあちゃんの昔話』
西谷貴子/著

山から薪を背負った人が 人里離れた墓場の傍らを通りかかると
うずくまった 小さな子供の姿が二つ
よく見ると 二人は小さな棒切れを持って
土を掘り起こしていた
「お前ら ここで何しとるんや」
「おっ母さんに 会いたいんや」
「おっ母さんは この下にござるで」
ISBN978-4-8120-2825-4
定価 本体1000円+税
発行日 2024年3月21日

詩集『小さきものたち』
斎藤久夫/著

風が通過した 無人の山と里山と
破壊された屋敷の内と外とを
猪と僅かな人とが通り抜けている
むかし鳥を撃つ老人の横に
ついていったことがあった
ISBN978-4-8120-2822-3
定価 本体2000円+税
発行日 2024年3月9日

新・日本現代詩文庫165『佐々木久春詩集』
佐々木久春/著

 佐々木久春氏の詩は、原発の安全神話崩壊というニヒリズムを飲み込み、そのことばは土や水の神秘に同化し、そこから微かに立ち上ってくる言霊を丁寧に拾う。ここで佐々木氏が訴えているのは、かつてタゴールが現代文明に警鐘を鳴らしたように、一木一草の自然界に魂が宿るという祈りの姿勢である。(中村不二夫・解説より)
ISBN978-4-8120-2826-1
定価 本体1400円+税
発行日 2024年3月31日

[新]詩論・エッセイ文庫27『歌の翼に』
池田瑛子/著

詩との出会いに始まり、詩人たちとの出会いと交流から、故郷への思いと幼い頃からの土地の変遷、現在までの来歴、そして母に対する感謝と豊かな追憶まで、さまざまな場面での著者の全貌を余す所なく収録した、初のエッセイ書。さらにそれらの関連詩篇も多数掲載し、多面的なアプローチで迫る画期的な構成にも注目!
ISBN978-4-8120-2821-6
定価 本体2000円+税
発行日 2022年3月25日

句集『菊日和』
蔭山節子/著

柔かき蓬摘みつつ香りけり
葉桜や参道の茶屋鰻裂く
菊日和聖堂孔子像祀る
藁囲ひして植ゑ替への冬牡丹
初空に雲なし筑波二峯立つ
ISBN978-4-8120-2824-7
定価 本体2000円+税
発行日 2022年3月25日

2024年3月更新 

詩集『泣いて笑って幼子よ』
森川芳州/著

幼子は/かまってもらいたくて/しかたないのです
まだ/半年にも満たない弟の顔に/お姉ちゃんが/タオルをかける
泣くかと思ったら/頓狂な声を上げて/笑い転げ始める
悪戯をされることが/嬉しくて/たまらないようだ
ISBN978-4-8120-2819-3
定価 本体2000円+税
発行日 2024315

2024年2月更新 

詩集『星降る森の波音』
柊月めぐみ/著

乳白色の輝く帯
あちらからあちらまで
まばゆくこぼれる
光の渦を駆ける
…………
南十字の森に響く
狩りの歌と舟歌が
星の子に聴かせる子守歌にとける頃合い
ISBN978-4-8120-2812-4
定価 本体2000円+税
発行日 2023年12月5日

詩集『更地』
水島美津江/著

町工場主だった父、寄り添う母、娘は革命に走る。そこには我々の愛する昭和の風景があった。林立する高層ビル群、空をふさぎ、風の通り道を奪う。彼らはだれも飢えていない。詩人水島美津江が示唆するのは、幸せでも不幸でもない人たちが浮遊する、心なき仮面の時代へのしずかな告発だ。人は更地の上で、もういちどやり直さないといけない。
(中村不二夫)
ISBN978-4-8120-2817-9
定価 本体2000円+税
発行日 2023年12月25日

詩集
『僕たちはなくしたことばを拾いに行こう』
南雲和代/著

僕は誰なのか
母は最期までこの国のことばを話さなかった
僕には十五歳までことばがなかった
沈黙の世界をただよっていた
僕には母のことばもこの国のことばも
どちらもなかった
ISBN978-4-8120-2813-1
定価 本体2000円+税
発行日 2023年12月25日

詩集『浮釣木の顚末』
内藤喜美子/著

階段の裏側に潜伏して
いつも隙あらば と様子を窺っている幻の目
なんでもない こんな所に
存在するものの気配が漂う
すっかり忘れてしまっていたんだわ
ISBN978-4-8120-2811-7
定価 本体2000円+税
発行日 2024年2月15日

2024年1月更新 

詩集『僕がいない町』
中川ヒロシ/著

河野先輩は全日本の選手で活躍したのち先生になった
田中君は建設業で何億か借金がある
高田君は工場をいつも辞めたがっている
宮下君は二年前 過労死した
僕は少しの間 本当に歌った
今は 何もなかったように 暮らしている
ISBN978-4-8120-2818-6
定価 本体1800円+税
発行日 2023年12月25日

詩集『果てしない青のために』
青山勇樹/著

せつなさがあふれてどうにも止められないときは
誘われるまま透きとおる青になって海をわたる
おそらくいのちはいくたびも姿を変えるだろう
いつかあなたとひとつになるからきっとなるから
おおきな願いそのものに成り代わろうとするように
ISBN978-4-8120-2797-4
定価 本体2000円+税
発行日 2023年12月24日

詩集『パルスと円環』
麻生秀顕/著

寒くて長い夜が明けて
幻を求める男たちが
白馬に乗ってやってきた
魂も凍る氷の世界から
唇も焼ける砂漠の地平から
そのころの私には
そう見えたのでしょう
ISBN978-4-8120-2816-2
定価 本体2000円+税
発行日 2023年12月20日

詩集『先生の手料理』
則武一女/著

クルミやなつめにピーナッツ
箱にぎゅうぎゅう詰めで送られてきた
先生からの贈り物
…………………
わたしの思い出の詰まっている所から
ISBN978-4-8120-2815-5
定価 本体2000円+税
発行日 2023年12月10日

詩集『虹のような日』
見上司/著

 ウクライナの悲劇にシェフチェンコの詩を思い、いや君はすでに二〇〇二年三月に北欧を思わせる『ニルス』という詩集を出していた。やさしさと愛をかみしめるために詩を書く、また「ペテルブルクの夏はうつくしい」(「白夜もしくは罪と罰」)と君に教えてくれたロシアの若い娘もいた、という。
 君の言う通り、詩を楽しもう。生きることと死ぬことの悲しみを滋味(あじわ)うために。各自に涙ぐみ、やさしい諦めのなかで、そして何度もことばを噛みしめながら。
(佐々木久春)                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
ISBN978-4-8120-2810-0
定価 本体2000円+税
発行日 2023年12月10日