新・日本現代詩文庫97『馬場晴世詩集』
馬場晴世/著
水
流れている
せせらぎで
大河で
海で
私の中で
(「水に」より)
その作品を成り立たせている背後の空間は深く大きい。生きてあること、存在を存在として支えている闇、目に見えないその時空に目を凝らし、呼びかける想像力がこの詩集の最上の部分を生みだしているのだ。
(水野るり子・解説より)
作者の、人間としての生涯における〈夢の屈折〉に耐える「芯」の強さは、爽やかな弾力を備えている。詩人は、自然の樹木、その「陰」、「香り」、それらに触発される幸いな〈創生〉の時を幾度も経験している。
(島 朝夫・解説より)
ここまでくれば、馬場晴世の「ライオン」の正体ははっきりしてきたと思う。童心に隠されていて、自覚的な詩人を除いて、いつしか消えてしまうもの。つまり、詩を書く精神のようなものだ。
(中上哲夫・解説より)
詩人馬場晴世は率直のひとである。自分の心に響いたことには脇目も振らずに進む。少女のひたむきさを持った“誠”の詩人である。そして困難な日常をも乗り越えて、ひたすら学び、旅し、自分の眼で、しかと確かめて多くの識見と生来の優しさで詩って来た。
(久宗睦子・解説より)
馬場詩学の特徴は、飽食/飢餓、刹那/永遠、顕在/潜在、享楽/禁欲、現世/来世、人口/自然、我欲/無欲、幸福/不幸の二つのカードを前に、つねに後者に視座を定め、ヒューマニズム溢れる固有の詩的時間を作り出していった。
(中村不二夫・解説より)
ISBN978-4-8120-1957-3 C 0192
定価1470円(5%税込)
詩集『遠き海明け』
川村慶子/著
ちいさな函、おおきな函の思い出函を抱いて、人はそれぞれに歳をかさねていく。川村慶子さんの詩、そして小説における人間心理の洞察力には、人の世を愛することから滲み出た血族との交わり、土地を愛する心がある。私は、長年、彼女の滋味豊かな作品群に接してきたが、この『遠き海明け』は、詩に命を賭してきたひとりの詩人の文学の系譜をうたい、語ってやまない魅力ある詩の広場といってもよいだろう。(西岡光秋)
ISBN978-4-8120-1949-8 C 0092
定価2625円(5%税込)
詩集『愛撫』
橋爪さち子/著
橋爪さんの詩には、生きることの歓びと
悲しみが凝縮されている。
一語の中に永遠が、一行の向こうに全宇宙が見える。
ひとつのいのちの産声とともに、
千の死者を悼む慟哭が聞こえてくる。
(一色真理)
ISBN978-4-8120-1950-4 C 0092
定価2100円(5%税込)
エリア・ポエジア叢書22『チルトテイソグナ』
寺井青/著
時間が真昼のままで止まる
ぼくらの世代は銀河の星に似ている。
いつも何かに追われ、圧倒的な数で時代の先端を走ってきた。
けれど、すべてが夢の徒労のように終わる時が来る。
ISBN978-4-8120-1942-9 C 0392
定価1890円(5%税込)
詩集『地球哀歌』
柳田光紀/著
現代世界の病根を詩人の宇宙的感覚と詩的想像力によって剔抉し、人間存在の不安に迫り、虚無の深淵を凝視する。
現代抒情詩の精粋!
ISBN978-4-8120-1928-3 C0092
定価2100円(5%税込)
詩集『残り灯』
山野井悌二/著
詩人・山野井悌二は坐孤庵と号する。老境に生きて、単独者の眼光はますます鋭く、世界と自らとを射抜いて止まない。慣れ親しんだ長短の韻文詩に加え、新たに開拓した散文詩は繊細かつ巧緻。名も知らず咲き誇る野の花のように独自の境地に到達している。
(一色真理)
ISBN978-4-8120-1918-4 C0092
定価2100円(5%税込)
詩集『雪消((ゆきげ))』
すずきいつお/著
雲行くように時は流れた。
遠く離れてこそ見えてくる風景、語ることのできる想いがある。
半世紀にわたる農学研究の経験に裏打ちされたすずきいつおの言葉は抒情的直観に流れることなく、雪深いふるさとの過去と現在を融通無礙に描いてやまない。
(一色真理)
ISBN978-4-8120-1930-6 C0092
定価2100円(5%税込)
詩集『いろはにほへど…』
下村和子/著
樹は 生と死の出会いの宿
人間の作ったものはすべて壊れてしまった。
けれども闇にたたずむことで、初めて見えてくる光がある。
孤独と絶望の中でこそ、風景はひとつの思想になる。
いのちのいろ「青」を探究し続ける詩人の新境地をひらく、
世界の再生の祈りをこめた23の詩篇。
ISBN978-4-8120-1906-1 C0092
定価2625円(5%税込)