詩集『文人達への哀歌』
山口敦子/著

 曾て芭蕉、山頭火を材とした詩集で、既に定評のある詩人・山口敦子が、今回は日本の文人達へ一人ひとりに寄り添い、同行二人のように、自らの俳句二首と詩一篇を献じ、その詩句を通して、哀切の情を吐露した新詩集で、この詩人ならではの、独自の新境地を開花させた魅力ある詩集である。
(菊田 守)

ISBN978-4-8120-2271-9
定価 本体2000円+税
発行日 2015年11月9日

詩集『庭舞台』
鈴木昌子/著

長男の戦死。届いたのは遺骨ではなく、石ころが一つ。連綿と繋がってきた家系の後継者(あとつぎ)として、育ててきた明治生まれの母には長男は「わが生命」そのものだったのに。――幼少期から現在まで、詩人が肌で感じた母の哀しみを通して、戦中・戦後史に生きた血を通わせる貴重な一冊である。
(比留間一成)

ISBN978-4-8120-2268-9
定価 本体2000円+税
発行日 2015年10月31日

詩集『遠い渚』
河内さち子/著

太古 ひとミトコンドリアは原初の海に芽生えた
わたしもやはり ひとというものらしい
月が大きく満ちるこの季節 引かれるように海に焦がれる

ISBN978-4-8120-2250-4
定価 本体2000円+税
発行日 2015年10月30日

詩集『踊り場の桜』
水野浩子/著


窓辺にすわり
ゆったりとこの景色を
眺めるのが
好きだった人
残照の時間を大方
まどろんで
過ごしていた人の
静かな終焉を
見守っていた風景

ISBN978-4-8120-2278-8
定価 本体2000円+税
発行日 2015年12月10日

詩集『鳥語』
高島清子/著

互に
肯きあいながら
ツツっと左の端までゆくと
もう片方もそのあとを追って
止まった

黙って寄り添うふたりの
森のような背模様が
はっきりとわかった

それから
ふたつのあわいを
沈黙の言葉が
饒舌に行き交うのを
私は聞いたのだ

ISBN978-4-8120-2272-6
定価 本体2500円+税
発行日 2015年11月10日

詩集『北と南』
太田康成/著

人生 Life
人生は素敵 Life is fine
酒滴の様に素敵 With wine

われら We
われ 愛す I love
故にわれらあり So we are

ISBN978-4-8120-2273-3
定価 本体2000円+税
発行日 2015年12月10日

詩集『POEMS症候群』
加藤千香子/著

何処にいても
深呼吸して 大の字にねそべり
宙返りして
星の子供と手をつなぎあえる
世界を返して下さい。

ISBN978-4-8120-2274-0
定価 本体2000円+税
発行日 2015年12月1日

詩集『タオの流れ』
松田悦子/著

ふいに帰りたい 無性に帰りたい
身にそぐわないものすべて 引き剥がして
道の向こう側へと帰りたい

ISBN978-4-8120-2279-5
定価 本体2000円+税
発行日 2015年12月10日

詩集『おいしい花畑』
戸田よね子/著

さあ 召し上がれ
どんどん 召し上がれ
お花畑が呼んでいる
お腹をすかせた風が
ごくん と唾を飲みこんだ

ISBN978-4-8120-2252-8
定価 本体2000円+税
発行日 2015年12月10日

新・日本現代詩文庫123『古屋久昭詩集』
解説/北畑光男・中村不二夫

 寒暖差の大きい場所ほど、果実としては最高の味といわれる甘くてしかも酸味をもつ果実が実るというが、山梨の果物といえばブドウ、モモ、サクランボなどが思い浮かぶ。このような風土で古屋さんの詩は鍛えられてきたのだ。生きる哀しみに風刺やユーモアを併せ持つ独自の詩境はこれら果物の味に似て甘く、酸っぱく、深い味わいをもつ果物と似てはいまいか。
(北畑光男・解説より)

ISBN978-4-8120-2241-2 C 0192
定価1400円(+税)
発行日 2015年8月30日

詩集『砂糖が溶けるまで』
加藤明彦/著

夜が眠りの器から
夢の滴をこぼす時
記憶の暗い水面に
幾重もの光の波紋が広がる

そしてひとは時の螺旋階段を降りてゆく

ISBN978-4-8120-2265-8
定価 本体2000円+税
発行日 2015年10月15日

詩集『日本昆虫詩集』
菊田守/著

まったく別の世界の境目、蝉のぬけ殻。障子や壁にぶつかりながら紫陽花の咲く花蔭にとんでいった、ががんぼ。瓢箪池のイグサの岸で交尾したまま産卵する帆かけ舟、モノサシトンボ……ページをめくるたびに蘇る子どもの日の情景。夏の風や空気の匂いさえ感じられるユーモラスな語り口の向こうに、僕たちの生の喜びと哀しみが。
(相沢正一郎)

ISBN978-4-8120-2267-2
定価 本体2000円+税
発行日 2015年11月25日

詩集『微笑む家』
西村啓子/著

藁の小さな馬に乗って行ってしまったはずなのに、
また帰ってきてくれた。
空気の外の透明な月から。
白線だけが杉林の上にでた月に向かって、伸びていく。
もうはるの国に行ったのかな。
わたしはいま、台風の目のなかにいる。
四千年後は、ともに土になって、すべてを覆う、覆われる。

ISBN978-4-8120-2255-9
定価 本体2000円+税
発行日 2015年10月30日

詩集『ヒアシンス または水栽培』
近藤由紀子/著

水栽培は
そこにありながら 見えないものを
ありありと見せる仕掛けだ

生活者として足早に過ごす日常に、ふと覚える違和感やずれ。
球根からいつしか根が出て、芽が伸びるように、
十五年の沈黙を破り、開花する気鋭の第二詩集。

ISBN978-4-8120-2266-5
定価 本体2000円+税
発行日 2015年12月20日

詩集『黙し声』
唯野一郎/著

唯野一郎は幻視するひとである。しかも言葉を通して、あるいは言葉そのものによって。こうして、皮膜に覆われた〈内〉が、幻視すなわち〈外〉との驚くべき交流によってしだいに流動し、やがて外部へと解放されてゆく過程が、スリリングに記される。「沈黙痛が飛散する」のだ。
(野村喜和夫)

ISBN978-4-8120-2280-1
定価 本体2000円+税
発行日 2015年12月20日