詩集『三日箸』
壺阪輝代/著
私たちは、日々当たり前のように箸を使っているが、考えてみれば、生まれて一番最初に習うのが箸使いである。自分のいのちを育む方法を、子は親から学ぶ。そして、死に際しては、箸によって終止符が打たれる。箸がひとりの人間の人生に深く関わってくるのは当然といえるだろう。
(「あとがき」より)
ISBN978-4-8120-1971-9 C 0092
定価2100円(5%税込)
詩集『夢宇宙論』
柳内やすこ/著
この詩集には、整然として美しい宇宙の数式のようなものが隠されている。星々や、人間や、地上のすべての存在は、その大いなる数式の欠片(かけら)であって、ために微小な存在であろうとも輝くのだという詩想が、慰藉と深い歓びをともなって感得させられる。〈宇宙〉への思索を祈りにまで高めた絶頂の詩集と思う。
(以倉紘平)
ISBN978-4-8120-1964-1 C 0092
定価2100円(5%税込)
詩集『一粒の砂―フクシマから世界に』
前田新/著
政府は前田新の故郷を、福島第一原発事故による「汚染状況重点調査地域」に指定した。
なんと無意味な文字列だろう。人々を予約された死の危機にさらし、言葉から魂を奪い去る権力という名の暴力。詩人はいま真実を見届ける一人の阿修羅と化す。
(一色真理)
ISBN978-4-8120-1969-6 C 0092
定価2625円(5%税込)
詩集『夕日とラッパ』
松崎縁/著
松崎縁さんは心の翼をもがれ、歌を忘れたカナリヤとなって、フランスをさまよっていた。そのとき、オンフルールの夕日、パリの風が記憶の底に眠っていたものを掘り起こした。夜店で買ってもらった玩具のラッパ、縁側の吊るし柿、母国の言葉、そして何よりも「私が私である」ことの大切さを。
(一色真理)
ISBN978-4-8120-1974-0 C 0092
定価2100円(5%税込)
新・日本現代詩文庫99『久宗睦子詩集』
久宗睦子/著
わたしは詩いたいのです
ばら色の頬を喪って
かわりに得たものを
あんなにも私を嘲けろうとした
時が
今はいつも私の隣りを歩いていることを
(「春のうた」より)
久宗睦子さんは、もしかすると、小説を書いたほうがよいのかもしれない――と、ふと私は思ったことがある。久宗さんの詩の多くは構造力に独自の秀れたものがあり、彼女の数奇な人生経験に裏付けされた物語性が、その作品に内流している。
(伊藤桂一・解説より)
久宗睦子さんの詩の特徴は、そのモチーフが〈外部の内在化〉、〈内部の外在化〉であるかを問わず、こうした質的時間の確保を核に構築されていることである。そこでの久宗さんは現世という舞台の上に立ち、凡庸な日常(物理的時間)を一瞬にして質的時間に変えてみせるマジシャンであると言ってよい。
(中村不二夫・解説より)
久宗睦子は生活の負の部分を全く詩わない詩人だった。早い時期に両親を亡くされ、それに続く数多の方便の苦労など、詩のどこにもあらわされていない。どんなときにも夢見る文学少女であった久宗睦子はその夢に向かって邁進していたのだ。
(野仲美弥子・解説より)
さまざまなアクシデントに、詩人は犀利な知性で抗いながら、直向に詩に向き合ってきた事が分かる。しかしこの詩人の独自性は、今も尚なまなましく息づいているらしいそれらの深手が、作中にむしろ甘くも、痛ましくも在って、詩人特有の抒情として華開いていることに在るのではないか。
(春木節子・解説より)
ISBN978-4-8120-1959-7 C 0192
定価1470円(5%税込)