2021年12月更新
詩集『東京の表情』
柳春玉/著
目次を開いた瞬間に眼を引く壮観な眺め。七十八篇の詩の表題が、皆「東京の~」を冠する。これほど一つの主題に熱意と思いを込めた詩集は類を見ない。詩人は強い好奇心で、日本の文化的営みに関心をよせる。面白いと思ったことは何でも書いていく書きぶりだが、故郷を離れ異邦に住む故の齟齬や疎外感もまた語られる。さらに恋愛抒情詩の佳品も書ける詩人である。これからもなお、生来のユーモアと機知に溢れた表現で読者の心を捉えていってほしい。(川中子義勝)
ISBN978-4-8120-2666-3
定価 本体2000円+税
発行日 2021年12月25日
[新]詩論・エッセイ文庫17『野の風にひとり』
倉田史子/著
五十余年の詩生活で交流した高田敏子を初め、多数の詩人たちへの感謝と顕彰を記した心豊かになるエッセイ。自らの故郷佐渡を回想した、滋味溢れる文章。そして圧巻は、高村光太郎に「甲州しびれ湖畔の自然を語る時、彼の筆は霊火を発する。」と言わしめた稀有で孤高の詩人野澤一、『木葉童子詩経』一巻のみを残したその詩人の詩業を余す所なく伝える「日本のソロー」は集中のハイライトである。
ISBN978-4-8120-2649-6
定価 本体1400円+税
発行日 2021年12月12日
詩集『風の空へ飛んだ』
ひとはなお/著
夕べ 鳥がくる
ゆれる頭が とじた羽が
木の実のように
枝にとまり
そうして 空へ
弧を描いて ゆく
ISBN978-4-8120-2663-2
定価 本体2000円+税
発行日 2021年12月10日
詩集『ちゃうんちゃいます?』
角野裕美/著
今度いっぺん言うてみたろ
「ちゃうんちゃいます?」って
オシャレ好き講師。大阪オバハン言葉。洗練されたリズム感。ときどき哀愁。たまに幻想。大阪文学学校で出会った角野裕美は、才気あふれる麗人である。そんな彼女が繰り出す多彩な詩の数々。現代詩は「まだ いけるんとちゃうの」。詩界に新風をもたらす、注目の第一詩集!(苗村吉昭)
ISBN978-4-8120-2658-8
定価 本体2000円+税
発行日 2021年11月30日
詩集『透明なガラスの向こう』
結城文/著
さっきまで白く煙るように激しく降っていたのに
わずかな希望のようにひとところ開けた青空
コーヒーを啜りながら眺めている間にも
雲の姿はどんどん変わる
ISBN978-4-8120-2657-1
定価 本体2000円+税
発行日 2021年11月30日
詩集『往きて還らぬものを』
市川愛/著
―『アルツハイマー氏』への鎮魂歌―
詩人は共に過ごした生活圏へ、そして蒼穹へ、今日も、亡き夫の魂を捜して歩く。夫の声がする。「おーい、みんなここにいるよ」、在りし日の夫が、妻に、娘たちに満面の笑顔で手を振っている。夫婦のあるべき普遍的価値の意味を深く問う、ヒューマニズム溢れる詩集。
中村不二夫(元「ふーず」同人)
ISBN978-4-8120-2656-4
定価 本体2000円+税
発行日 2021年11月3日
[新]詩論・エッセイ文庫15
『戦後詩界二重構造論』
古賀博文/著
既存の詩界に異議を唱え「地方にあっても佳い詩は良いと評価されるフェアな詩界を構築して行くべき」という主張を続けてきた著者の20余年に亘る論述のなかから自選された詩論の集成。心から詩を愛する著者の認識の到達点。
ISBN978-4-8120-2643-4
定価 本体1800円+税
発行日 2021年10月20日
新・世界現代詩文庫18『李鄕莪詩集』
李鄕莪/著
李鄕莪詩人は生まれつきの詩人である。彼女は誰よりも端正に、詩人としての道を守ってきた詩人である。それは、彼女が特別な詩的才能を持っている人であることも、特異な人生の経歴を持っていることをも、意味するのではない。ひょっとしたら、李鄕莪詩人は、誰よりも平凡で素朴な生活で一貫してきた詩人であると言える。にもかかわらず、きっぱりと彼女を「まことの詩人」と言えるのは、彼女が自分と他者と世界に注ぐ、絶え間ない詩的熱情と、限りのない愛のためである。詩に対する彼女の切なる思いは、なかなか薄らぐことがなく、まるですり減らない灯心のように、引き続き詩心の炎を燃やす。その炎は、爆竹のように華麗であるとか壮烈ではないが、かすかな火種を保持しているかまどのように、温かいぬくもりで私たちの霊魂を溶かす魔力を持っている。(カン・キョンヒ 解説より)
ISBN978-4-8120-2660-1
定価 本体1400円+税
発行日 2021年11月30日
新・日本現代詩文庫155『室井大和詩集』
室井大和/著
放射能から逃れた「避難」した飼い主からも見放された牛たちは、ただ涙を流して彷徨うだけだ。詩人は、物言えぬ牛たちが流す涙に、原発事故のどうしようもない不条理を「原発事故は人災でしょう」と、言葉はやさしいが思いは深く激しく抗議するのだ。
(埋田昇二・解説より)
ISBN978-4-8120-2662-5
定価 本体1400円+税
発行日 2021年11月30日
詩集『たくさんの普通』
戸田よね子/著
あなたにはあなたの わたしにはわたしの普通がある
たくさんの普通に出会い たくさんの普通に振り回された
普通がたくさん 今までも これからも
ISBN978-4-8120-2645-8
定価 本体2000円+税
発行日 2021年10月10日
詩集『ビューグルがなる』
篠崎フクシ/著
天地創造からの「天文百景」めくれる痛さが、
意識下の詩のゲノムに炎を点し、
コトバを全体的な〈喩〉に変える装置を作動させたのか。
舟(まち)や雨(きみ)、気/体(アトモスフィア)などの視覚・聴覚を駆使する世界は、
コトバがコトバをひきよせる構造もみせ。
「ビューグルがなる」「アトモスフィア」がみせる息遣い
照射の先の未来は、過去に追いつき超えられるだろうか。
(原田道子)
ISBN978-4-8120-2642-7
定価 本体2000円+税
発行日 2021年9月30日
詩と思想新人賞叢書16『追伸、この先の地平より』
雪柳あうこ/著
雪柳さんの詩は、みずからの感性の震えを正面から言葉に移しかえてゆく。詩作への正当な立ち向かい方であると、僕は思う。世界へのこよなく優しいまなざしと、詩の奥深くへ展開されてゆく適度に厚みのある物語。これらの見事な詩篇群は、作りあげたというよりも、すでに雪柳さんの中に育まれていたものだ。世界に触れれば、その分の言葉のしずくが詩の指先からこぼれてくる。
(松下育男)
ISBN978-4-8120-2652-6
定価 本体2000円+税
発行日 2021年11月1日
詩集『孔雀時計』
藤井雅人/著
ひとは見つめる おのれの影を
知らぬ間に 時を刻みつづける分身
定めなくさまよう身もこころも
たしかに 時に捉えられている
石柱に落ちるはかない影
それが己であると知りながら
ひとは 時を刻みつづけるしかない
永遠と結ばれた
ひとつの交点であることを
希みながら
ISBN978-4-8120-2653-3
定価 本体2000円+税
発行日 2021年10月20日
評論集『非サイエンス詩学のすすめ』
三田洋/著
昨今、私たちは詩や評論を執筆する際、建造物にたとえるなら瑕疵の少ない完成度の高い作品をめざして腐心する。それが疑いなく真摯な創作姿勢だとされる。しかしここで、私たちはそのような創作理念から脱出し、非学問的非教養的詩学へと踏み出さねばならない。本書は、いわば非サイエンス詩学のすすめである。
ISBN978-4-8120-2661-8
定価 本体2000円+税
発行日 2021年10月5日
定価 本体2000円+税
発行日 2021年5月19日
詩集『詩の故郷吉備スケッチ帳』
柏原康弘/著
ある日鳩が歌い始めると
近くの家の庭に
赤い鳥の群れがやってきた
次の日は別の庭に黄色い群れ
次の日は桃色の大群が
あちこちの庭に降りた
ISBN978-4-8120-2654-0
定価 本体700円+税
発行日 2021年10月10日
[新]詩論・エッセイ文庫16『大手拓次の方へ』
愛敬浩一/著
白秋門下の三羽烏と謳われた大手拓次。しかし一般的にその詩の評価は「グロテスクな空想によって、大胆に性欲を描く」という偏ったものであった。愛敬浩一は独自の視点でそれを覆す。本書はただの「感想」「雑文」に止まらない。これまでの研究所に拘らない新鮮で画期的な「大手拓次入門書」なのである。四十六歳で亡くなるまでずっと「詩が本当に必要だった」大手拓次の、新たなる肖像がここに出現した。
ISBN978-4-8120-2648-9
定価 本体1400円+税
発行日 2021年11月12日
詩集『石臼』
鈴木茂夫/著
刃物のようなもの
拳銃のようなものを持った
被疑者あるいは容疑者
…………
明日には消える偽り
伝えた者たちは
守備の姿勢から後退に向かう
ISBN978-4-8120-2655-7
定価 本体2000円+税
発行日 2021年10月10日
評論集『民衆詩派ルネッサンス 実践版』
苗村吉昭/著
現代詩再生の道が見えてきた!
難解な非日常表現により、多くの一般読者を遠ざけてしまった現代詩。しかし、一般読者に届く現代詩を着実に書き続けてきた詩人たちがいる。本書は「詩と思想」誌上で講評を博した「実践版 新・民衆詩派詩論」10章を本論とし、新たにテーマ別補論を書き加えた詩界変革の15章。
ISBN978-4-8120-2651-9
定価 本体2500円+税
発行日 2021年11月1日
詩集『やさしい言葉』
福西トモ子/著
福西さんの詩は、どれも皆、平易でやさしい言葉で書かれている。
それは福西さんのお人柄なのだが、しかし、老境の日々の哀歓を通じて、人間の心理の奥深い機微に触れるものである。
(前田新)
ISBN978-4-8120-2650-2
定価 本体2000円+税
発行日 2021年10月20日
詩集『おさと帰り』
藤本かずみ/著
『おさと帰り』とは、なんと懐かしい言葉だろう。
この詩集は、著者の少女時代の思い出を三章に分け書かれたものだが、繙いているうちに、読者はきっと、知らず知らずのうちに、少女(著者)と同じ「おさと帰り」の世界の虜になってしまうだろう。それは、「おさと」には、人間誰しもが持っている懐かしい自分が生きていて、それが共鳴するのだろう。
(中原道夫・解説より)
ISBN978-4-8120-2644-1
定価 本体2000円+税
発行日 2021年9月30日
詩集『火時計』
山本泰生/著
こころが輝いていられるのは容易でない
折れたり割れているときもある
ねじ曲がり潰れていることもある
そうであれ
いっぽんの突き抜くやわらかい釘が欲しい
ISBN978-4-8120-2647-2
定価 本体2000円+税
発行日 2021年10月20日
2021年9月更新
詩集『午後二時の旅人』
伊丹悦子/著
伊丹さんは最近になって詩作活動を再開した。
伊丹さんの詩の特徴は、二十年の歳月を経て、
何も変わっておらず、いかなる詩的対象であっても、
人や物が作者の恣意的感情に支配されず、
自在で開放された言語空間をもっていることにある。
はたして、このようにあらかじめ詩を書くことが目的化されず、
詩は生まれて来ることなどあるものなのか。
しかし、これが伊丹さんの詩法なのである。
(中村不二夫・解説より)
ISBN978-4-8120-2622-9
定価 本体2000円+税
発行日 2021年9月30日
詩集『花信風』
山本光一/著
山本光一の詩は生きとし生けるものに、無条件でやさしい。愛を想う詩人の心は勁く折れない。詩集『花信風』は練達の和菓子職人への日常的「変身」に加え、戦時下の学徒、兵士たちの運命につよく感応、新境地を開いている。パンでミック下、愛の過剰と欠乏、そんな不安な時代に生きる人のために編まれた詩集。
(中村不二夫)
ISBN978-4-8120-2634-2
定価 本体2000円+税
発行日 2021年8月20日
詩集『おだやかな洪水』
加藤思何理/著
洪水には二種類ある。
ひとつは、家もクルマも街路樹も
あるいは学校や市場や天文台や水族館も
すなわちは眼前のあらゆるものを押し流す
烈しく巨大な洪水だ。
そしてもうひとつは
実におだやかなそれ。
あまりに静かな洪水ゆえに
けっして何も押し流すことはない。
ただ、ぼくたちの頭と心
をのぞいては。
ISBN978-4-8120-2635-9
定価 本体2000円+税
発行日 2021年9月17日
詩集『朝のメザシ』
天木三枝子/著
日常をしんしんと緊密に肉体化し、その深淵をいきいきと巧みにとらえて、極めて重厚な造形を得ている。おのれの清浄なる健康さに、輝いている。
(冨長覚梁)
ISBN978-4-8120-2636-6
定価 本体2000円+税
発行日 2021年9月15日
詩集『民族の鼓動』
河合祥一/著
両手を大きく広げ
大鳥のように
飛び立ちたいと
考えたことがあるか
自由に飛び回り
瞬く間に
かつて暮らした
田舎に舞い戻り
鳥瞰する
ISBN978-4-8120-2640-3
定価 本体2000円+税
発行日 2021年9月18日