2022年7月更新 


新・日本現代詩文庫158『岸本嘉名男詩集』
岸本嘉名男/著

 岸本さんは早くから萩原朔太郎へのなみなみならぬ傾倒があり、『私の萩原朔太郎』という研究書がある。この本のなかで岸本さんはいろいろな角度から近代詩の一頂点である朔太郎を論じ、著者自身の詩や美に対する思考を重ねられて幅をもたされていて、そこには独自の、長年にわたる深い研究の成果が見られる。岸本さんは短期大学では米英文学作品を担当され、W・E・イェイツやR・フロストに関しての論考もあり、つねに努力を重ねてきた大学人でもある。
(有馬敲・解説より)
ISBN978-4-8120-2679-3
定価 本体1400円+税
発行日 2022年3月30日


詩集『月の名前』
内田道子/著

世界がまだ若かった頃
黒い岩山の上に
皓皓と輝くまるい光を見上げて
「月」と最初に名付けたのは
誰だったのだろう
そのとき隣にいて 大きく頷き
清らかな白い光を浴びながら
一緒に夜空を仰いで
「ああ 月」とその名を
最初に受け入れた人は
誰だったのだろう
(「月」)
ISBN978-4-8120-2681-6
定価 本体2000円+税
発行日 2022年4月30日


詩集『絶体絶命』
鎌田東二/著

父さん
あなたが教えた所得倍増は
これほど手ひどい貧困をもたらしました
いのちのこえがとどかぬほどの貧困を
非常事態である
異常事態である
緊急事態である
エリ エリ レマ サバクタニ
襟 恵理 霊真 砂漠谷
ISBN978-4-8120-2689-2
定価 本体2000円+税
発行日 2022年5月30日


詩集『缶蹴り』
中谷順子/著

あ、行かないで
私は心の中で 何度この言葉を発したことだろう
その度に その真実の意味に
何も気づこうとしないまま
為す術もなく たやすく見送ってしまった
松風のざわめき
ISBN978-4-8120-2678-6
定価 本体2000円+税
発行日 2022年5月30日


エッセイ集『ラブレター』
渡辺眞智子/著

私の前をどんなに沢山の感動的な野良猫ちゃんが通り過ぎたことだろう。……著者が野良猫たちに餌を配るきっかけとなった、可憐なモモ子、子猫の時に心ない輩に足を切り落とされたピョン子、野生の血が治らないグレ、そして孤高の精神を貫くシロなど、痛快、波乱万丈、そして哀切な野良猫との共存の物語。
ISBN978-4-8120-2688-5
定価 本体1500円+税
発行日 2022年6月11日


詩集『乳飲み子のうた』
森川芳州/著

生まれたばかりの乳飲み子は/何を考えているのか/いつまでも見つめてくる/不信そうな顔をして/時たま口を揺るがせて
小さな手が/コックリしたり/バイバイしたり/ニギニギしたり/私のこころを/かいさぐりながら/いつまでも見つめてくる/
お前をあやしているのか/お前にあやされているのか
瞬きもせずに/よそ見もせずに/見つめてくる
ISBN978-4-8120-2674-8
定価 本体2000円+税
発行日 2022年3月15日

2022年5月更新 


新・日本現代詩文庫157『佐川亜紀詩集』
佐川亜紀/著

過去の負の歴史を封印し、ますます怪しくなっていく日本。その中で、「社会批判を自らタブーにしてしまっては言論の自由さえ守れない」と考え、「話しかける言葉が優しければ、返ってくる言葉も優しい」との韓国のことわざを大事に思い、「柔らかい里芋の日本語を摑みたい」と願う佐川亜紀の詩業は、ますます貴重になっていくだろう。
(石川逸子・解説より)
ISBN978-4-8120-2680-9
定価 本体1400円+税
発行日 2022年3月30日


詩集『私が愛した 不揃いな人々』
長瀬一夫/著

椅子をずらすと父親がいた。
死期を看て、肉体を焼いて写真だけになったはずなのに、
その椅子に悠然と座っているではないか。
ISBN978-4-8120-2683-0
定価 本体2000円+税
発行日 2022年5月20日


詩集『すぐそばにいる幸福』
鈴木悦子/著

鈴木さんは若い頃から長く詩作を続けていらした方で、その詩には、ずば抜けた新しい描法をとり入れた言葉の飛躍があり、抒情詩もとてもお上手なのです。それはいわゆるしめった抒情とは対峙した形で、言葉を飛躍させ、躍らせ、連想や心象を導き出した詩法を各詩篇からみることができます。そしてそれこそが彼女が苦悩の末に摑み得た鋭敏な感受性による視覚的心象の成果なのです。
(中谷順子)
ISBN978-4-8120-2684-7
定価 本体2000円+税
発行日 2022年4月9日


『門田照子全詩集』
門田照子/著

詩業50年 日常を見据えた詩的活力の集成
 この詩人は、日常のどんなできごとにさし向かう時も、現実をしっかり凝視する眼と心を持っている。その記述が淡淡と平衡を保っているのは、詩精神の勁さによるものだろう。(伊藤桂一)
 門田照子の詩の営為が、方言詩を世に問うことから始められているということは、なかなか暗示的である。その特殊な語りのからりとして強烈な説得性、訴求力。豊後弁という生きた言葉のひびきは、意味は半解ながら言葉自体がしたたかな酒のような、ビートのきいた詩の魅力だった。(菊地貞三)
ISBN978-4-8120-2659-5
定価 本体3500円+税
発行日 2022年3月1日


『大塚欽一全詩集(後期)』
大塚欽一/著

これは私の全存在を賭けた投壜通信である。
本書には大塚欽一の未刊詩集15冊を収録する。
「生きるとは何か」という狂おしい思いに、詩人自身が全存在を賭けて答えた、驚異とも言うべき詩魂のほとばしりが、さまざまな形をとった圧倒的な詩群に結実した。この営為こそが詩人の存在証明である。
ISBN978-4-8120-2673-1
定価 本体6000円+税
発行日 2022年3月30日

2022年3月更新 


歌集『クラヴィクラ』
家坂利清/著

祭壇で友のはにかむ写真みて追憶はながい旅をはじめる
亡き人を偲び、在りし日を思い、切々と、時に高らかに、そしてしめやかに詠む、家坂利清待望の第三歌集。絶唱95首!
ISBN978-4-8120-2672-4
定価 本体1500円+税
発行日 2022年1月31日


詩集『心の旅はバトン作り』
尼崎總枝/著

尼崎さんは、言葉を三五七調に短く切って飛ばしていく独特の描法と、弾けるリズムを身につけた詩人です。対象へのリアルな導入や短く切った言葉の組み合わせは、溢れるほどの生命力に満ちていて驚きました。
 宮沢賢治の詩が、生の本質を交流電灯の点滅光や、高揚や、ダンスに見たように、生の本質をリズムと受け止めているのが本詩集です。
(中谷順子)
ISBN978-4-8120-2671-7
定価 本体2000円+税
発行日 2022年1月16日


随筆集『生きる』
田中佑季明/著

未曽有の東日本大地震により五年間の避難生活を余儀なくされた著者と百歳の母志津。不自由な介護生活は過酷なものであった。そんな中でも執筆活動を諦めることなく、社会情勢にも窓を開き続けた不屈の精神が、この二十八篇の文章の中で輝いている。早逝の姉佐知への鎮魂の章も圧巻の感動を与えてくれる、必読の随筆集。
ISBN978-4-8120-2664-9
定価 本体2000円+税
発行日 2021年12月16日


新・日本現代詩文庫156『山口春樹詩集』
山口春樹/著

 大阪文学学校の講師には、詩集出版のアドバイスまでは求められていないのだが、私が見た限り山口の提出作品は自制の効いた上質のものであり、個々の作品レベルを向上させるよりも、一冊の書物として詩集を仕上げることの方が重要だと感じたのである。そして、山口は愚直に私の助言に従い、驚異的な集中力で次々と作品を完成させていき、第一詩集『象牙の塔の人々』(澪標)は二〇〇九年五月三十一日に出版された。中でも山口の優れた研究業績を題材とした「N‐グリカン」は科学的知識を土台に社会問題を自分事として考えさせて読ませる秀作であった。
(苗村吉昭・解説より)
ISBN978-4-8120-2669-4
定価 本体1400円+税
発行日 2022年2月5日


詩集『在ったという不思議』
吉田隶平/著


もしかすると
ぼくは死んでしまったのか
不思議に気持ちのいい
そんな時間がある
ISBN978-4-8120-2670-0
定価 本体2000円+税
発行日 2022年2月2日


詩集『風の ふふふ』
かわいふくみ/著


コートを脱ぎ シャツを脱ぎ
皮も肉も脱いで 大人をぬぎすてる
話し言葉も皮をむけば母音だけになる
裸になって野生に還って母体を蹴って
呼吸する
アーイーウーエーオー
ISBN978-4-8120-2665-6
定価 本体2000円+税
発行日 2022年3月1日


句集『ひとり遊び』
乳井昌史/著

寒湯治効き目あるよと励まされ
湯治場とその周辺から、変わってゆく自然環境、
地域の衰退と再生を見つめながら、自らの病に向かい、
淡々とあるいは濃密に、
温泉の湯とともに湧き上がってくる365句
ISBN978-4-8120-2675-5
定価 本体2000円+税
発行日 2022年2月17日


詩集『星痕』
佐伯圭/著

ふたりだからこそ広がっていく
沈黙の底で
宿っても滅び 雨に
打たれても滅ぶならいっそと
ささやく声
ISBN978-4-8120-2676-2
定価 本体2000円+税
発行日 2022年2月20日


詩集『今日を刻む』
狩野貞子/著

ヘルスメーターに乗る
体重四十九kg
重みは 太古の恐竜よりも軽く
玉川上水の木々の間を飛ぶ小鳥よりも重い
ISBN978-4-8120-2667-0
定価 本体2000円+税
発行日 2022年3月15日


詩集『足もとの冬』
里見静江/著

冬は始まった
窓の結露に白い吐息がながれる朝 鈍色の光が キラキラ
ときには交わらないままの まなざしとことば
どこへ往こうと しているのだろうか
ふたりは
ISBN978-4-8120-2668-7
定価 本体2000円+税
発行日 2022年3月23日